備えていますか?命を守る装備品
まさかの火災、「煙」があなたの呼吸を奪う
スモークブロックの必要性
火災で最も危険なのは呼吸困難に陥ってしまうことで、炎で焼け死ぬようなことはほとんどなく、統計上では建物火災による死亡者の8割が窒息が原因で亡くなっている事実があります。
煙には一酸化炭素をはじめとした有毒ガスが含まれ、有毒な煙を吸い込むことで死に至る危険性が格段に高くなります。
火災から身を守るためには、防毒・防煙マスクを装備し呼吸の確保をするための備えが非常に重要です。
スモークブロック フルフェイスタイプは、安全に初期消火活動を行うために、言い換えれば「火に向かう」ために、マウス&ノーズタイプは、呼吸を確保し安全に速やかに避難するために、言い換えれば「火から遠ざかる」ために用意された災害対策用品です。
ただし、火災に対して万能というわけではありません。誤った認識で使用することはかえって危険度を増す結果となってしまいますので、必ず状況に適した製品の用途を理解した上で、万が一の場合に備えるようお願いします。
初期消火の定義
初期消火とは、火災の早期消火や被害拡大阻止のための基本的な活動です。
消火器や屋内消火栓設備などを用い、被害を最小限に抑えるために、短時間で素早く消火することが求められます。
初期消火活動は、「慌てず」「落ち着いて」行動するのがポイントです。
スモークブロック フルフェイスタイプは、この初期消火活動をより安全に行うための製品です。
初期消火の定義として、活動が可能な状況とは天井に火が到達するまでと一般的に言われています。
つまり、スモークブロック フルフェイスタイプを装備し、初期消火活動を行うことのできる限界点もおおよそこれに等しいとも言えます。
消火が可能なのか不安な場合や、火がすでに天井に到達してしまっている場合には、決して無理をせず、現場に到着する消防隊にまかせ直ちに避難してください。
間違っても、スモークブロックを装備し燃え盛る火の中に飛び込むような行動は絶対にとらないようにしてください。
身の危険を感じた際は、安全な場所に避難することも重要です。
初期消火活動が可能であるか、あるいは速やかに避難しなければならないのか、を瞬時に見極めることは難しいことも事実です。
耐火建物の火災は、木造家屋に比べて空気の流れが少ないため、だらだらと燃え、煙が大量に発生するのが特長で、炎が見えないことから逃げなくても危険はないと思われがちですが、防毒・防煙マスク等を装備せずに初期消火活動を行っていると、煙に巻かれてしまう危険性が高まります。
木造家屋の火災は、全焼に至るまで平均20分程度です。
それらを念頭に置き初期消火活動を行ってください。
火災発生の頻度と人的被害
誰しも「自分は火事とは無縁だ。」そう考えています。
その理由は様々ですが、最も多い理由は「火事にならないように注意しているから」という理由でしょう。
しかし、注意してさえいれば本当に火災に遭うことはないのでしょうか。
2022年の全国での出火件数は36,375件、うち建物火災は20,185件、死傷者は7,165人です。建物火災の1日当たりの出火件数は55件で、26分に1件の割合で出火していることとなり、コーヒーを飲んでほっとしている間に1件の火災が発生している計算です。
とはいえ、これまで火災事故に遭遇した経験がない限り、なかなか実感を伴わないのも事実で、火の元に気をつけてさえいれば、火災は発生しないと多くの人が考えています。
確かに気をつけていれば火災は防ぐことができる側面はありますし、火の元に注意することは非常に大切なことです。
建物火災の発生原因を見てみると、第1位が「ガスこんろ」です。これは不注意が原因だと考えられるため、気をつけてさえいれば防ぐことは可能です。
しかし出火原因の第6位は「放火」(5.0%)となっています。放火は、自分の不注意とは別のところで発生してしまいますので、いくら注意しても防ぐことはできません。放火の疑いも加えると7.7%と、第3位とほぼ同率を占めています。しかも、死者が出た火災の第1位が放火で16.9%、放火の疑いも含めると10件に2件の割合で死者が出ています。
防ぐことができる側面という点は、放火のように自分の注意や努力では防ぎようのない側面もあるからなのです。さらに言うならば、いくら出火しないように気をつけていても、隣の建物が火事になり飛び火する可能性も否定できません。
自分で注意するだけでは、完全に火災を防ぐことは難しいのが現実です。
出火原因の上位には「たばこ」や「こんろ」など、よく耳にする原因が挙がっていますが、実際には思わぬ原因で出火することもあります。例えば「トラッキング現象」。これはコンセントの接点部分に溜まったホコリが原因で発火します。他には「収れん火災」。これは、ガラス製の置物等に直射日光があたり、置物がレンズの役割を果たして火災が発生します。考えもつかないことが原因で火事になってしまうことがある以上、注意するだけで火災を防ぐことは難しい一例です。
火災で死者が出る理由
火災で死者が出てしまう理由は意外と知られていません。
「なぜ、火災で死者が出てしまうのか知っていますか?」と質問すると、多くの人は「焼け死ぬから」と答えます。
しかし、残念ながらそれは正しい答えではありません。
正解は「息ができなくなるから」で、火災で死者が出てしまうのは、煙にまかれて窒息してしまうことが原因で、建物火災による死亡者の8割が窒息が原因で亡くなっているのが現実です。炎で焼け死ぬということはほとんどありません。
それは、火災のメカニズムを考えればよく分かります。
火災は、人のいない部屋で出火した場合に大きく燃え上がる場合がほとんどです。
人がいる部屋で出火したならば、直ぐに気づき初期段階で消火するなどの対応が可能ですが、人がいない部屋で出火した場合には、煙や異臭が充満してくるまで気がつかないことが多いでしょう。つまり、気がついたときには煙が充満してしまっている場合がほとんどのケースです。
煙が危険な理由は、煙には一酸化炭素をはじめ、塩化水素、シアン化水素、アンモニアなどの有毒ガスが含まれ、有毒な煙を吸い込むことで死に至る危険性が格段に高くなります。特に様々な化学物質が身の回りに使われている現状を考えると、火災で発生する有毒ガスの種類も数多くなります。調査によると、一酸化炭素、ホルムアルデヒド、アンモニア、ベンゼン、二酸化硫黄など10種類以上の有毒ガスが発生するとされています。
火災による死因について
令和元年中の火災における死亡に至った経過をみると、「逃げ遅れ」が568人で最も多く、全体の47.2%を占めています。その中でも「避難行動を起こしているが、逃げ切れなかったと思われるもの。(一応自力避難したが、避難中、やけど、ガス吸引し病院等で死亡した場合を含む)」が200人と全体の約20%を占めています。
また、住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く)を年齢別にみると、65歳以上の高齢者が70.7%と大半を占めています。足腰が弱っているため逃げ遅れてしまうためで、高齢化社会に伴い高齢者の死亡割合は増加傾向にあります。
有毒ガスの危険性
有毒ガスを含む煙が危険だと知っても、一酸化炭素やシアン化化合物などの名称にはあまり馴染みがなく、その名称を聞いてもどの程度危険なものなのかよく分からないでしょう。そこで、有毒ガスを吸い込むとどのような症状が出るのか、火災発生後どの程度で致死量に達するのか、などについて、有毒ガスで最も発生する可能性の高い一酸化炭素を例に説明いたします。
一酸化炭素は、無味無臭のため感知することが難しく、事前に危険を察知することが難しい有毒ガスの一種です。
吸い始めのうちは、頭痛・耳鳴・めまい・嘔気などの症状が出現します。さらに吸い続けた場合、意識はあっても徐々に体の自由が利かなくなってきます。視界が狭くなり、目が見えなくなり、立っていることもできず、その場に倒れ込んでしまい、意識はあるものの体が動かない状態に陥ります。そのうち意識もなくなり、窒息死してしまいます。高い濃度の一酸化炭素を吸った場合には、その場で昏睡状態に陥ります。
いずれにしても、その場から動けず高濃度の一酸化炭素をそのまま吸い続けることは、窒息死につながってしまいます。
- CO濃度血中COHb濃度症状
- ~350~10なし、軽い頭痛、めまい
- 5010~20軽い頭痛、激しい運動時の息切れ
- 10020~30拍動性の頭痛、体動時の息切れ
- 20030~40激しい頭痛、悪心、嘔吐、判断力の低下
- 300~50040~50頻脈、意識混濁、失神
- 800~120050~80意識消失、痙攣、呼吸不全、呼吸停止
- 1900~80~致命(即死)
実験では、一酸化炭素は発炎後約8分で短時間致死濃度である1.3%に達し、シアン化水素は発炎後5分で短時間致死濃度に達してしまう結果が出ていて、これは発炎後10分も経たないうちに致死量の有毒ガスが発生することを示しています。
短時間で大量の有毒ガスが発生した場合、瞬く間に拡散してしまいますので、火元から離れて初期消火活動をしていた人でさえ、有毒ガスにまきこまれて亡くなるケースもあるほどです。
煙の危険性
火災の熱で空気より軽くなった有毒ガスを含む煙は、瞬く間に廊下や部屋などの空間に充満することになります。
あるビル火災で逃げ遅れた被害者の方は、泣きながら携帯電話で話していましたが、最期の言葉は「天井が落ちてくる」という言葉でした。火災後の現場検証では、天井が焼け落ちたという事実はありませんでしたが、被害者の方は、なぜそのようなことを言ったのでしょうか。
煙による被害を抑えるために、実際に建物を燃やしてどのように煙が充満していくのかを確かめるため、建物内部の様子をテレビカメラで撮影した実験がありますが、その映像では、軽くなった煙が天井にまで充満し、その後、床に向かって下りてくる様子が写っていました。まさに天井が落ちてくるかの如く、一様に広がった煙がズンズンと下りてきていました。被害者の方も同じ状況にあったことが予想されます。
有毒ガスのために体が動きにくくなっているところに、天井が落ちてくるかのような状況に遭遇してしまえば、パニックに陥ってしまい、安全に避難することは難しくなるでしょう。
煙の充満・移動速度を考えると、床を這って避難していても煙に巻かれてしまいますので、安全を確保するためには早い段階から身を守る必要があります。
防毒・防煙マスクの必要性
前章までの内容から、火災に遭った場合には煙と有毒ガスへの対策が最も重要であることがお分かりになったかと思います。
火災では、炎が天井まで及んでいなければ初期消火を行いますが、もし、すでに天井に燃え移ってしまっていれば、速やかに避難し消防隊に任せるしかありません。初期消火を行うにしろ、速やかに避難するにしろ、どちらの場合においても、防毒・防煙マスクの必要性が高いことは事実です。
なぜなら、無味無臭の有毒ガスが発生している可能性があるため、その状況下で何の装備もないまま消火・避難することは危険性が高く、自身の生命を危険にさらすことになるからです。
ある火災の生き証人の証言によれば、火災発生の数分後には煙で視界が遮られていたそうで、少しでももたついていると有毒ガスを含んだ煙に巻き込まれ、死亡する危険性が格段にアップします。
また、実際に燃え上がっている炎を消火した経験がないため、どのように消せば良いのか分からないのが一般的で、いざ消火しようとしても、炎の放射熱が熱すぎておそらくは近づくことすらできないでしょう。
たとえ、熱さに耐え炎に近づけたとしても、消火液を吹きかけた際に熱や炎が吹き返してくるため、何の装備もなしでは満足に火を消すことは難しいでしょう。
日頃から訓練している消防士でも、「何の装備もなしに、消火器だけで火を消すことは難しいだろう」と言う意見を耳にします。
有毒ガスや煙が発生している中、パニックを防ぎ、冷静に消火、あるいは避難するためには、防毒・防煙マスクは必需品といえます。特に初期消火活動を行うためには、顔を覆うフルフェイスタイプがなければ難しいでしょう。
また、炎や煙の恐怖、熱さや呼吸困難など劣悪な状況の中で避難誘導を行わなければならないため、避難を先導する人にもフルフェイスタイプが好ましいと言えます。家族や従業員・お客様の生命を預かる以上、冷静な判断と的確な指示を行う必要があります。そのためには、誘導責任者が生命の危機を回避できるような装備を身につけることが必要です。
以上のように、火災に遭遇した際に生命の安全を確保し大切な財産を守るためには、防毒・防煙マスクを装備することが重要です。
中でも責任ある立場にある場合や、初期消火活動をきちんと行うためには、フルフェイスタイプのマスクが必須となります。
様々なシチュエーション
では、どのような場合に防毒・防煙マスクが必要になるのでしょうか。
火災と言っても様々なケースが想定されますので、具体例をいくつか挙げてみました。
【一般住宅編】
- グリルで魚を焼いていたところ、グリル内に付着していた脂分にグリルの火が引火し、出火。
煙で目を開けていられず、近くにあったタオルなどにも燃え移り、手がつけられない状況になり、やむなく避難した。 - 火の点いたたばこを灰皿に載せたまま忘れてしまったため、暫くして落下し、床に敷いてあったカーペット等に着火し燃え広がった。異臭で気づいたが、そのときは壁にまで火が燃え移っていた。火を消そうにも、有毒ガスが充満しているため咳き込んでしまい、近寄れなかった。
- ストーブの上にナイロン紐を張り洗濯物を干していたが、暖まった空気が上昇し、洗濯物が風に吹かれたような状態になりストーブの上に落ち、衣類等に着火し、燃え広がった。
居間だったため、可燃物が多く置いてあり、それらに燃え移ってしまっていた。発泡スチロールなどの石油系製品に燃え移ったため、黒煙で視界が妨げられ、消火活動を満足に行えない状況で、そのまま天井まで炎が燃え広がった。 - 室内犬の暖をとるため電気ストーブを着けたまま外出したところ、台所の椅子に掛けてあった衣類を室内犬がじゃれ遊び電気ストーブに被せたため着火し、出火。
帰ってきた際に炎はさほど広がっていなかったが、有毒ガスが充満していたため、呼吸ができず消火できなかった。 - 居間に設置していたエアコンの配線をネズミがかじり、出火。
異臭で気づいたが、居間に入ったところ、壁が燃えていた。消火を試みたが、煙が充満していた視界が狭く、十分な消火活動が行えなかった。 - アロマキャンドルに火をつけ、室内の床上に置いた状態で外出したところ、同キャンドルの火が付近に置いてあったダンボールに接炎して、出火。帰宅した際、床の絨毯が燃え、黒煙を発していた。黒い煙と炎とで恐怖し、避難した。
- 蚊取り線香に火を付けて押入のそばに置いていたところ、小窓から風が入り、押入から垂らしていた布製カーテンが風で揺れ、蚊取り線香に接触したため着火し、押し入れに燃え広がった。
押入れに収納してあったプラスティックケースや化繊の衣類から大量の黒煙と有毒ガスが発生し、近づくことができなかった。
ここに挙げたのは、消火できなかった事例の一部です。
これらの多くは防毒・防煙マスクがあれば、初期消火活動を行い、鎮火させることができた可能性の高い事案です。
防毒・防煙マスクがなければ火災現場にすら近寄れない結果に終わってしまう場合でも、防毒・防煙マスクにより視界と呼吸が確保されていれば十分に消火活動を行え、被害を最小限に食い止められた可能性があった事例は多々あります。
【オフィスビル・工場編】
- 給湯器内部が腐食して孔があき、そこから熱気が噴出したため外壁への熱気で着火。炎は大きくなかったが有毒ガスがひどかったため現場に近づくことができず、従業員は全員避難することに。
- 温水洗浄便座の本体と便座をつなぐ電気配線の一部が断線し、そこから出火。トイレは狭いためあっという間に煙と有毒ガスが充満してしまった。幸いトイレに人がいなかったので死者は出なかったが、もし人がいれば死亡していた危険があった。
- オフィス内で使用していたファックスの電源コードが長年にわたりファックス台のキャスター等に踏みつけられていたため半断線状態となり通電中に発熱し、出火。近くにあったファックス用紙やカーテンに燃え移ってしまった。夜だったため人が少なく、気づいたときには黒煙があがっていた。
- コンピューター(サーバー)室の天井が漏水し、設置されていたコンピューターのモニターに水がかかりスパークし、出火。サーバーがダウンしたことで気づいたが、そのときは煙と有毒ガスでサーバー室には入れず、入り口付近から消火器を使って消火を試みたが、全く役に立たなかった。
- 海産物加工会社の製品倉庫で、缶詰をパレット上に並べフィルムでまとめ上げる音フラパック機のヒーターとフィルムが接触し、着火。その日は倉庫に人がいなかったため、気づいたときには製品倉庫内に煙が充満し、状況の把握すら不可能だった。隣にあった工場も焼失。
- 化学製品工場で、点検が終了したプラントの運転を再開するため、仕切り弁を抜き取ろうとした際オイルが流出し、発火。あっという間に炎が拡がり、有毒ガスを含んだ黒煙が立ち上った。逃げ遅れた階下の従業員が死亡。
オフィスや工場は、一般住宅と異なり、建物規模が大きいこと、関係者の人数が多いことから、火災が発生しても覚知が遅くなりがちで、発生する煙や有毒ガスの量も一般住宅とは桁違いです。
そのような状況で、初期消火活動を確実に行い、あるいは安全に避難誘導するためには、フルフェイスタイプの防毒・防煙マスクが必須です。